SQLと関係代数 正規化・クエリ最適化編 佐久間 正樹 前回「SQLと関係代数 基本演算編」に引き続き、データベースの数学的表現とその応用について考えます。今回はリレーションの正規化とクエリ最適化についてです。 1 正規化の数学的表現 表(テーブル、リレーション)の名前と属性集合の組による抽象化をリレーションスキーマ、リレーションスキーマに従う実際のデータが入ったリレーションをそのリレーションスキ
高校数学の内容に「平均値の定理」があります。平均値の定理は、大学で解析学を学ぶときの基礎となる定理ですが、受験ではあまり活躍せず、定理の意味についてもほとんど語られないまま高等教育を終える方もいらっしゃると思います。 今回はそんな平均値の定理についてお話ししたいと思います。 1 ラグランジュの平均値の定理 実は平均値の定理にはいくつかのバリエーションがあるのですが、単に「平均値の定理」というと、以
1 概要 本記事では数理論理学についての基本的な知識,とくに古典命題論理の意味論と自然演繹による証明論の知識を仮定します. 普通の論理では論理結合子として\(\wedge, \vee, \to, \neg, \bot\)あたりを使っているかと思います. それぞれ「かつ」「または」「ならば」「否定」「矛盾」です. またこれらの他に重要な論理演算としてしばしば「かつ」「または」に否定をつけたNANDと
SQLと関係代数 基本演算編 佐久間 正樹 リレーショナルデータベースの根本理論には、関係代数(relational algebra) があり、SQLもその上に構築されています。とはいえ、SQLではINNER JOINやOUTER JOINのような複雑な演算が一発で書けてしまい、サブクエリやWindow関数などのような一見数学から縁遠いように見える便利な機能もあるため、その数学的な意味や構成を意識
今回は待ち行列理論のM/M/1モデルの公式の数学的背景と導出について解説します。これは典型的には一列に並んだ客を一つの窓口が対応したり、リクエストの列を一台のサーバーが処理したりする状況で使われる公式です。 応用情報技術者試験でもよく問われるものですが、公式は基本的に暗記するものとされ、数学的理論について出題されることはありません。情報系の書籍でもさらっと公式だけ載っているケースが多いです。しかし
ランダムウォークの特性関数 仁謹(Jyn kin) 仁謹です。今回は特性関数というものを定義し、三角関数の知識によってランダムウォークの性質を分析していきましょう。 推移関数\(P(x, y)\)によって定まる\(R := {\mathbb{Z}}^d\)上のランダムウォークに関して、半開区間の直積\((-\pi, \pi]^d\)を定義域とする複素数値関数 \[\phi(\theta) := \
格子上のランダムウォーク1 ~ベルヌーイランダムウォークの再帰性~ 仁謹(Jyn kin) 初めまして仁謹です。いきなりですが、 今回はランダムウォークについてお話します。 特に、格子上のランダムウォーク、つまり、値が固定された自然数\(d\)に対して、 \(d\)次元の格子\(R\)というものを考え、その上を移動する点について考えていきましょう。 \[R := \{x = (x_1, x_2,
「0で割ってはいけません」とよく言われますが,通常の実数や複素数以外の体系で0で割ること(零除算)ができるようなものはいくつかあります.今回はそのような体系の例である実射影直線,輪(wheel),リーマン球面,前草原についてご紹介します. 1 そもそも何故0で割ってはいけないのか? そもそも「0で割ってはいけません」と言われるのは何故でしょうか? このようなことが言われる前提となる文脈では実数や複
数学に登場する無限大には様々な種類があります.例えば,極限における発散を表す無限大,超実数の無限大,無限集合の濃度としての無限大などが挙げられます.極限の文脈では,無限大は数ではなく形式的な記号だとされることが多いですが,集合論や代数学では「数」,すなわち演算の対象として扱われることもあります.本記事では無限大の種類をいくつか紹介します. 1 極限における無限大 実数列\((a_n)\)と実数\(
\(N\)次元超平面配置の問題 Part 1の続きです. 1 ザスラフスキー(Zaslavsky)の定理に基づく計算 前回の解法では(1)の最大値を漸化式によるゴリゴリ計算で初等的に求めましたが,実は束論を用いるとよりエレガントに証明できます.更に,二項係数の和が出てくる必然性が高次元でも説明できるようになります.Zaslavskyの定理[1] と呼ばれる次の事実を使います. Theorem 1.
2019年度の東京工業大学(現 東京科学大学)の入学試験に次のような問題が出題されました. 東京工業大学 2019 数学 第4問 \(H_1,H_2,\ldots,H_n\)を空間内の\(n\)枚の平面とする.\(H_1,H_2,\ldots,H_n\)によって空間が\(T(H_1,H_2,\ldots,H_n)\)個の空間領域に分割されるとする.例えば,空間の座標を\((x,y,z)\)とすると
次の積分の値はどうなるでしょうか? \[\lim_{n\to\infty}\int_0^1\int_0^1\cdots\int_0^1\left(\frac{n}{x_1+x_2+\cdots +x_n}\right)^3 dx_1 dx_2\cdots dx_n\] 答えを先に言ってしまうと\(8\)になります.しかし,\(n\)重の積分を直接計算するのはなかなか大変です.どうやって証明すれば良