\(N\)次元超平面配置の問題 Part 1の続きです. 1 ザスラフスキー(Zaslavsky)の定理に基づく計算 前回の解法では(1)の最大値を漸化式によるゴリゴリ計算で初等的に求めましたが,実は束論を用いるとよりエレガントに証明できます.更に,二項係数の和が出てくる必然性が高次元でも説明できるようになります.Zaslavskyの定理[1] と呼ばれる次の事実を使います. Theorem 1.
2019年度の東京工業大学(現 東京科学大学)の入学試験に次のような問題が出題されました. 東京工業大学 2019 数学 第4問 \(H_1,H_2,\ldots,H_n\)を空間内の\(n\)枚の平面とする.\(H_1,H_2,\ldots,H_n\)によって空間が\(T(H_1,H_2,\ldots,H_n)\)個の空間領域に分割されるとする.例えば,空間の座標を\((x,y,z)\)とすると
次の積分の値はどうなるでしょうか? \[\lim_{n\to\infty}\int_0^1\int_0^1\cdots\int_0^1\left(\frac{n}{x_1+x_2+\cdots +x_n}\right)^3 dx_1 dx_2\cdots dx_n\] 答えを先に言ってしまうと\(8\)になります.しかし,\(n\)重の積分を直接計算するのはなかなか大変です.どうやって証明すれば良
Borwein積分と呼ばれる不思議な積分をご紹介します.まずは次のいくつかの定積分をご覧ください. \[\int_0^{\infty}\frac{\sin(x)}{x}dx=\frac{\pi}{2}\] \[\int_0^{\infty}\frac{\sin(x)}{x} \frac{\sin(x/3)}{x/3} dx=\frac{\pi}{2}\] \[\int_0^{\infty}\fra
この記事は、フーリエ級数展開と無限和の研究の第三回です。式番号が前回の続きからになっています。 3 リーマンゼータ関数とディリクレベータ関数 リーマンゼータ関数とディリクレベータ関数には、よく知られた特殊値とそうでない特殊値があります。実はそのよく知られた部分とそうでない部分には密接な繋がりがあります。今回はフーリエ級数を利用してリーマンゼータ関数の特殊値と、それに関連するディリクレベータ関数の特
この記事は、フーリエ級数展開と無限和の研究の第二回です。式番号が前回の続きからになっています。 2 バーゼル問題とその応用 バーゼル問題は、平方数の逆数和がどんな値になるかという問題です。この問題は1735年にオイラーによって解かれ、\(\pi^2/6\)に収束することが証明されました。平方数の逆数和に円周率\(\pi\)が出てくることは驚きですが、これには三角関数が深く関わっています。ここではフ
Abstract フーリエ級数とは、周期関数を三角関数の無限和で表現する方法で、その性質は理工学において周期信号を単純な波の和で表すときに重宝されます。 今回はフーリエ級数を利用して整数の逆数和に関する問題を考えようと思います。第一章ではフーリエ級数について紹介し、第二章では有名なバーゼル問題とその類似の問題を考察し、第三章では、リーマンゼータ関数とディリクレベータ関数の関連性について、フーリエ級
【集え!数学好き社内チャット】確率の問題でcosが登場!? その1からの続きです。 4の倍数となる確率について、解法の前になぜこんな式になるのか解説します。 ▼4の倍数についての考察 次回からは 4の倍数となる確率を2通りの方法で求めます。行列を用いた確率漸化式による解法と、多項式の係数から組み合わせを数え上げる解法です。もう分かってしまった方がいましたら、チャットに解法を上げてください。 和が4
数学好き社員たちによる社内チャットを淡々と公開します。 問題:理想的な 6 面のサイコロを振ったとき、出目が偶数となる確率は 1/2 ですが、(任意の自然数) n 個のサイコロを振ったとき、出目の和が偶数となる確率は?この話けっこう続きます。気長に投稿する予定です。 一様分布は畳み込めなくて分布の形がどんどん変わるんですよね・・・0 から n を超えない最大の偶数まで和を取る必要がありそうですね。